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印刷に使われる原版とは何か、種類や役割について

印刷に使われる「原版」とは、文字や写真、イラストなどの情報を印刷物として複製するためのもとになる版や画像情報のことです。

ただし、印刷業界では「原版」という言葉が必ずしも一つの意味だけで使われているわけではありません。

実際に印刷機へ取り付ける版を「刷版」や「印刷版」と呼んだり、その版を作るためのフィルムやデータなどを「原版」と呼んだりする場合もあります。

そのため、印刷について理解する際には、「原版」「刷版」「版下」「印刷データ」などの言葉を区別して考えることが重要です。

また、印刷に使われる版はすべて同じ構造ではありません。

オフセット印刷では平版、活版印刷やフレキソ印刷では凸版、グラビア印刷では凹版、スクリーン印刷では孔版というように、印刷方式によって版の構造やインキを転写する仕組みが異なります。

目次

印刷における原版の役割

原版や刷版には、印刷物に必要な文字や画像の情報を保持し、同じ内容を繰り返し再現する役割があります。

特に大量の印刷物を一定の品質で生産する印刷方式では、版の精度が仕上がりに大きく影響します。

文字や画像の情報を保持する

印刷版には、文字、写真、線、図形など、最終的に印刷したい情報が形成されています。

画像を形成する部分を「画線部」、印刷しない部分を「非画線部」と呼ぶことがあります。

印刷方式によって、画線部を凸状にしたり、凹状にしたり、化学的な性質の違いによってインキが付く部分と付かない部分を分けたりします。

こうした仕組みによって、デザインデータに含まれる文字や画像を紙などの被印刷物へ再現できます。

同じ内容を繰り返し印刷する

版を使用する大きなメリットは、同じ内容を繰り返し印刷できることです。

一度適切な版を作製すれば、その版を使って同じ文字や画像を数百枚、数千枚、場合によってはさらに大量に印刷できます。

そのため、チラシ、パンフレット、カタログ、書籍、パッケージ、包装材など、大量生産される印刷物では重要な役割を担っています。

印刷物の品質を左右する

版の精度や状態は、印刷物の仕上がりにも影響します。

版上の細い線や小さな文字、網点などが正しく形成されていなければ、文字がつぶれたり、写真の階調が適切に再現されなかったりする可能性があります。

また、複数の色を重ねる印刷では、それぞれの版の位置を正確に合わせる必要があります。

そのため、製版は印刷品質を左右する重要な工程の一つです。

印刷に使われる版の主な種類

印刷に使われる版は、構造によって大きく「平版」「凸版」「凹版」「孔版」に分類できます。

それぞれインキが付着する仕組みや、被印刷物へ転写する方法が異なります。

平版

平版は、印刷する部分と印刷しない部分に大きな高低差を設けず、それぞれの表面性質の違いを利用してインキを付着させる方式です。

代表的なのがオフセット印刷です。

一般的な湿し水を使うオフセット印刷では、水と油が反発する性質を利用します。

画線部は油性のインキとなじみやすく、非画線部は湿し水となじみやすい状態になっています。

その結果、必要な部分だけにインキを付着させることができます。

なお、オフセット印刷には湿し水を使用しない「水なし印刷」もあるため、すべての平版印刷が水と油の反発だけを利用しているわけではありません。

凸版

凸版は、印刷する部分が周囲より高くなっている版です。

凸状になった部分へインキを付け、紙などに押し当てることで文字や画像を転写します。

印鑑やスタンプと似た仕組みと考えると分かりやすいでしょう。

活版印刷やフレキソ印刷などが凸版方式に含まれます。

凹版

凹版は、印刷する部分が版の表面よりもへこんでいる方式です。

へこんだ部分にインキを保持し、そのインキを紙やフィルムなどへ転写します。

代表的なのがグラビア印刷です。

グラビア印刷では、円筒状のシリンダー表面に非常に細かな凹部を作り、その中にインキを保持して印刷します。

孔版

孔版は、版に設けられた細かな開口部からインキを通して印刷する方式です。

代表例がスクリーン印刷です。

メッシュ状のスクリーンにインキを通す部分と通さない部分を作り、必要な部分からだけインキを押し出して印刷します。

参考サイト

印刷方式の分類|印刷のあらまし|印刷とは|いんさつPlaza

オフセット印刷で使われる原版・刷版

オフセット印刷は、商業印刷で広く利用されている代表的な印刷方式の一つです。

チラシ、パンフレット、カタログ、ポスター、書籍など、多くの印刷物に使用されています。

アルミニウム製の刷版が広く使われている

一般的なオフセット印刷では、アルミニウムを基材とした刷版が広く使用されています。

印刷データをもとに刷版上へ画線部と非画線部を形成し、その版を印刷機の版胴へ取り付けて印刷します。

オフセット印刷では、刷版から直接紙へインキを移すわけではありません。

まず刷版のインキをゴム製の「ブランケット」へ転写し、そのブランケットから紙へ転写します。

一度別の媒体へ移してから印刷することが、オフセット印刷の大きな特徴です。

CTPによる製版が一般的

現在のオフセット印刷では、「CTP(Computer to Plate)」による製版が一般的です。

CTPでは、印刷用のデジタルデータをもとに専用の出力装置を使用し、直接刷版へ画像を形成します。

かつては、印刷用データからフィルムを出力し、そのフィルムを使用して刷版を作る工程が一般的でした。

CTPではフィルムを介する工程を省略できるため、製版工程の効率化や品質の安定化につながっています。

参考サイト

刷版とは何なのか?|当矢印刷株式会社

活版印刷で使われる原版

活版印刷は、凸版方式を利用した伝統的な印刷方法です。

凸状の文字や図柄にインキを付着させ、紙へ押し当てて印刷します。

活字や樹脂版などを使用する

従来の活版印刷では、金属製の活字などを組み合わせて版面を作り、そこにインキを付けて印刷していました。

現在では、感光性樹脂などを使用してデザインに合わせた凸版を作製する方法もあります。

活版印刷は現在の大量商業印刷の中心ではありませんが、名刺、ショップカード、招待状などの印刷で利用されています。

また、現代のレタープレスでは、版を紙へ押し込むことで生じる凹凸を意匠として積極的に生かすこともあります。

フレキソ印刷で使われる原版

フレキソ印刷は、柔軟性のある版を使用する凸版印刷の一種です。

包装材や段ボールなどの印刷で広く利用されています。

感光性樹脂版などが使われる

現在のフレキソ印刷では、感光性樹脂などで作られた柔軟な版が一般的に使用されています。

版の凸部分へインキを付け、その部分から被印刷物へインキを転写します。

柔軟性のある版を使用するため、表面が完全に平滑ではない素材にも比較的対応しやすい点が特徴です。

段ボール、紙袋、ラベル、包装フィルムなど、さまざまな印刷物に使用されています。

グラビア印刷で使われる原版

グラビア印刷は、凹版方式を利用した代表的な印刷方法です。

大量印刷や包装分野などで広く利用されています。

グラビアシリンダーを使用する

グラビア印刷では、一般的な平らな板状の版ではなく、「グラビアシリンダー」と呼ばれる円筒状の版を使用します。

シリンダーの表面には「セル」と呼ばれる非常に小さなくぼみが形成されており、その中にインキを保持します。

印刷時には版の表面へインキを供給し、「ドクターブレード」と呼ばれる部品で表面の余分なインキをかき取ります。

その後、セルの中に残ったインキを紙やフィルムへ転写します。

大量印刷に適している

グラビア印刷の版は製版に一定の時間や費用が必要ですが、耐刷性が高く、大量印刷に適しています。

そのため、食品や日用品などの包装フィルムをはじめ、大量生産が求められる印刷物で利用されています。

また、写真やグラデーションなどの階調表現にも適した印刷方式です。

スクリーン印刷で使われる原版

スクリーン印刷は、孔版方式を利用した印刷方法です。

紙だけでなく、さまざまな素材へ印刷できる点が大きな特徴です。

メッシュ状のスクリーン版を使用する

スクリーン印刷では、細かな網目を持つメッシュ状のスクリーンへ、インキを通す部分と通さない部分を形成します。

スクリーン上にインキを置き、「スキージ」と呼ばれる道具でインキを押し出すと、開口部からインキが通り、下に置かれた素材へ転写されます。

紙のほか、布、プラスチック、金属、ガラスなど、幅広い素材への印刷が可能です。

Tシャツ、看板、ポスター、工業製品、電子部品など、さまざまな分野で利用されています。

印刷方式によって原版の構造が異なる

代表的な印刷方式と版の違いを整理すると、以下のようになります。

印刷方式版の分類主な版特徴
オフセット印刷平版アルミニウム刷版など画線部と非画線部の表面性質の違いを利用する
活版印刷凸版活字・樹脂版など凸部分に付着したインキを転写する
フレキソ印刷凸版感光性樹脂版など柔軟な凸版を使用する
グラビア印刷凹版グラビアシリンダー凹部に保持したインキを転写する
スクリーン印刷孔版スクリーン版開口部からインキを押し出す

このように、原版や刷版の形状、素材、インキを転写する仕組みは、印刷方式によって大きく異なります。

カラー印刷では色ごとに版を用意することがある

オフセット印刷やグラビア印刷、フレキソ印刷など、物理的な版を使用する印刷方式では、基本的に使用するインキの色ごとに版を用意します。

オフセット印刷ではCMYKの4版を使用する

一般的なフルカラーのオフセット印刷では、「CMYK」と呼ばれる4色を使用します。

Cはシアン、Mはマゼンタ、Yはイエロー、Kはブラックを意味します。

一つの印刷面をプロセス4色で印刷する場合は、基本的にC、M、Y、Kそれぞれに対応した4版を使用します。

各色を適切な位置に重ねて印刷することで、写真やイラストなどのさまざまな色を再現します。

企業のロゴカラーなど、CMYKだけでは表現しにくい色を「特色」として追加する場合には、その特色専用の版も必要になります。

ただし、デジタル印刷では固定された物理的な版を使用しないため、「カラー印刷では必ず複数の原版が必要」というわけではありません。

原版や刷版は印刷品質にも影響する

版は印刷物の仕上がりを左右する重要な要素です。

版の精度だけでなく、印刷時の位置合わせや版の状態なども品質に影響します。

見当ズレが発生すると色がずれて見える

CMYKなど複数色を重ねる印刷では、それぞれの色を正確な位置に印刷する必要があります。

各色の印刷位置がずれると、文字や写真の輪郭に別の色が見えたり、画像がぼやけて見えたりする場合があります。

このような現象は「見当ズレ」と呼ばれ、一般には「版ズレ」と表現されることもあります。

特に細かな文字や細線では、わずかな位置の違いでも目立つ場合があります。

網点の再現性も重要

一般的なオフセット印刷では、写真の濃淡や色の濃さなどを細かな「網点」によって表現します。

網点が刷版上で正しく形成されていなければ、写真の階調が十分に再現できなかったり、印刷物が必要以上に濃く見えたりする可能性があります。

そのため、製版工程では細かな網点まで正確に再現することが重要です。

版の摩耗や傷も品質に影響する

同じ版を長時間使用して大量に印刷すると、印刷方式や版の材質によっては摩耗や劣化が発生する場合があります。

版に傷が付いたり、画線部が摩耗したりすると、文字や線、網点などを正確に再現できなくなる可能性があります。

そのため、大量印刷では、どの程度の印刷に耐えられるかを示す「耐刷性」も重要です。

原版と版下の違い

印刷関連では「原版」と似た言葉として「版下」があります。

原版と版下は同じ意味ではありません。

版下とは印刷用の版を作るための完成原稿

版下とは本来、文字や写真、イラストなどを印刷する位置に配置し、印刷用の版を作るために完成させた原稿を指します。

かつては、文字や写真を紙などへ貼り付けた物理的な版下を作成し、それを撮影してフィルムや印刷版を作製する方法が広く行われていました。

現在ではDTPが普及したことで、物理的な版下を作る機会は大幅に減っています。

現在は、DTPソフトなどで作成し、PDFなどの形式にした印刷用データを入稿し、そのデータをもとに製版する方法が一般的です。

現在はデータから直接製版できる

現代のオフセット印刷では、印刷データをもとにCTPで直接刷版を作製できます。

そのため、従来のように「版下を作る→フィルムを作る→刷版を作る」という工程を経ないケースが一般的になっています。

現在の印刷工程は、基本的に「印刷データ→製版→刷版→印刷」と考えると分かりやすいでしょう。

デジタル印刷では固定された原版を使用しない

すべての印刷方式で、物理的な原版や刷版が必要になるわけではありません。

代表的なのが、オンデマンド印刷などに利用されるデジタル印刷です。

データから直接印刷できる

デジタル印刷では、印刷データをもとに直接画像を形成するため、オフセット印刷のような固定された物理的刷版を作製する必要がありません。

そのため、少部数の印刷では製版に必要な工程や初期コストを抑えやすいというメリットがあります。

また、一枚ごとに印刷する文字や画像を変更する「バリアブル印刷」にも対応しやすいのが特徴です。

たとえば、宛名、会員番号、QRコード、写真などを一枚ずつ変更して印刷できます。

一方、同一内容を大量に印刷する場合は、印刷条件や部数によって、オフセット印刷などの有版印刷のほうが適していることもあります。

原版の種類を知ると印刷方式の違いが理解しやすい

印刷に使われる原版や刷版は、文字や写真、イラストなどの情報を保持し、印刷物へ再現するための重要な役割を担っています。

ただし、使用する版の構造や素材は印刷方式によって異なります。

オフセット印刷では平版、活版印刷やフレキソ印刷では凸版、グラビア印刷では凹版、スクリーン印刷では孔版が使用されます。

また、現在ではCTPによってデータから直接刷版を作製する方法が一般化している一方、デジタル印刷のように固定された物理的な版を必要としない印刷方式も広く利用されています。

印刷物の部数、使用する素材、必要な品質、納期、コストなどによって適した印刷方法は変わります。

原版や刷版の種類と役割を理解しておくことで、それぞれの印刷方式がどのような仕組みで印刷されているのかを理解しやすくなります。

以上、印刷に使われる原版とは何か、種類や役割についてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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